インド派遣JICA青年海外協力隊(徳武寛貴氏)活動報告

JICA青年海外協力隊のラグビー隊員としてインド(オディシャ州ブバネシュワル)でラグビーの普及に取り組む徳武寛貴さんにこれまでの活動を振り返りお話を伺いました。 

・徳武さんの活動について教えてください。
-Kalinga Institute of Social Sociences (KISS)という、 少数部族出身の青少年の育成支援に設立された学校でラグビー部のコーチをしています。全校生徒はおよそ27,000人で、ラグビー部員は500名を超えます。私は、独立行政法人国際協力機構(JICA)からの青年海外協力隊員として、2016年夏からここブバネシュワルに派遣されており、インド人コーチ2名と協力し、現在は9歳から23歳の生徒に指導をしています。

・500名への指導とは驚きです。日本でもこれだけ多くの選手に指導しているコーチはいないのではないでしょうか。
-KISSは、少数部族等恵まれない子供たちへの教育機関であり、生活費、学費を寄付で賄っており、生徒に経済的な負担はありません。無料で勉強し、生活できる学校として生徒数は世界一多い。ギネスブックに掲載されていると聞いています。
すべての部員を一度に指導することはできませんが、できるだけ多くの選手と関わりたいと思っています。

・徳武さんはインドに派遣される以前もコーチ経験があったのですか?
-いいえ、ありませんでした。高校、大学とプレーヤーとしてラグビーに関わってきたので、自分のプレーヤー経験を指導に活かしたいと思っていました。

・具体的には?日本のラグビーの特徴はありますか?
-日本のラグビーには「One for all, all for one」や「ノーサイド」という大切な精神があります。KISSではものを大切にすること、例えばグラウンドにお礼をするとか、練習後にボールを並べるといったことから取り組んでいます。また、着任当初、選手は練習中に無言でパスを放っていました。ラグビーはチームプレーだから、仲間を、チームワークを大切にしようと呼びかけ続け、今では練習中に「チャロチャロ!」(日本語で「こっちこっち!」「早く早く!」「パス!」)という掛け声が聞かれるようになりました。

・徳武さんの意識づけが広がっているのですね。このほかに、工夫したり苦労したことはありますか?
-インドの人の特徴として、自分の考えをはっきり示すことがあります。自分より目上の人に対しても意見が異なればはっきり主張しますし、やりたくないと思ったら動いてくれません。でも、楽しいと感じたり、やりたいと思ったことには全力で取り組みます。ラグビーで言うと、タックルは苦手ですがアタックは大好きです。練習メニューを考えるときは楽しくできるように意識しています。それに、強い精神力と忍耐力があります。タックルの練習は手を抜くことがあっても、試合では真正面からタックルに立ち向かう。そのファイトには感心します。

・徳武さんがインドの人を尊重している姿勢が感じられます。
-インドの人は自分も人も分け隔てなく接しますし、日本で暮らしていたときより人間らしさを感じることもあります。僕はインドから愛情をもらったと感じています。

・JICAの青年海外協力隊としてラグビーを指導して、自分が成長したと感じるところはありますか?
-KISSに来て、ラグビーは思いやりがないとできないスポーツであることに改めて気づきました。自分が指導した選手が初めて試合に臨んだ日、選手から「ありがとう」と言われ、これが指導者の醍醐味なのだと感じました。そして、自分自身がもっとラグビーを学びたいと思いました。

・そんな徳武さんが学生時代に指導を受けた神宮寺徹氏がインド代表チームのコーチとして日本から派遣されました。
-母校(山梨学院大学)のコーチが指導にくると聞いて、最初は驚きました。青年海外協力隊に応募することは自分一人で決めたので、恩師に相談していませんでした。神宮寺さんとは大学卒業以来の再会でしたが、恩師にインドラグビーを知ってもらえることがとても嬉しく、自分にできるサポート(今回は主に通訳として活躍)をしっかり務めようと思いました。

・7月には2年の任期を終えて日本に帰国します。インドでの経験をどのように活かしていく予定ですか?
-KISSの生徒は皆、ラグビーを通じて世界が広がったと言います。将来はKISSに恩返しをしたいという生徒も少なくありません。自分自身も、インドに来て考え方がポジティブになりましたし、インドへの感謝の気持ちが強くあります。いつかは再びインドを訪れ、日本とインドのラグビーの架け橋になれたらと考えています。

残り2ケ月となった活動も、子どもたちがラグビーを楽しんでくれたら嬉しいと語る徳武さん。「インドから愛情をもらった」という徳武さんの言葉からは感謝、謙虚、尊重とともに、誇らしさも感じられました。

2019年ラグビーワールドカップに向けて、アジアにおけるラグビーの普及が急務となっています。徳武さんの指導によりラグビーの楽しさに触れた子どもたちがこれからもラグビーに親しみ続けられるよう、日本ラグビー協会もアジアンスクラムプロジェクトを通じ引き続きサポートしていきます。