スリランカ派遣(バドゥッラ) 総括報告「コーチング、レフリングに奔走」

白馬 悠
派遣先:スリランカ・バドゥッラ県バドゥッラ
派遣期間:2013年3月26日~6月23日

■世界トップクラスのコーチになるという夢
私には世界トップクラスのラグビー指導者になるという夢があります。そのためには様々な経験が必要です。私は茨城県の茗溪学園高校の出身で、その後、アメリカの大学に留学しました。一昨年、日本ラグビーフットボール協会の中竹竜二コーチング・ディレクターとお会いし、ニュージーランドに4カ月間、コーチング留学する機会を得ました。
なぜ世界トップレベルのコーチを目指すかといえば、中竹さんの著書の中に、コーチング・ディレクターの役目として、2019年、日本開催のラグビーワールドカップまでに世界トップクラスのコーチを100名養成したいという旨の記述があったからです。そのトップランナーになりたいと思ったのです。
昨年9月からは、日本ラグビーフットボール協会のリソースコーチとして活動し、そのセッションの中でアジアンスクラムプロジェクトのことを知って応募しました。今回はJICAとの連携で、ラグビーを使った国際貢献ができる。30歳の私にとって、大きなチャレンジになると感じ応募しました。
まず考えたのは、現地の依頼にはすべて応えようということです。そのためには自分が体調を崩すようなことがあってはならない。体調管理には万全を期しました。現地の皆さんの信頼を勝ち得ることで日々の活動をやりきることを意識したのです。そして、最も大切なことは、私が帰国した後、彼らが自立してラグビーに取り組む環境を作ることでした。選手や指導者のモチベーションを高め、私がいなくなってから先の活動につながるよう全力を尽くしました。

■スポーツ指導者への指導、7人制大会のレフリーと奔走
私は、バドゥッラという標高1000m前後の山岳地帯で活動しました。主に4つの町の学校を巡回して、中学、高校生への普及活動を行いました。既存のチームを強くするのではなく、未経験者へのラグビー指導が主な役目です。指導上で苦労したのは言葉の問題です。、英語の理解度が低い子供が多かったのです。体で手本を示すなど適宜調整しながらのコーチングでした。約2カ月半で約500名の中高生に指導することができました。
 学校のグラウンンド、公共のグラウンド、芝も土もいろんな場所で活動しました。場所によっては子供達が裸足で駆け回っているところもありました。一部の学校にはラグビークラブもあり、そういう場所ではラグビースキルのレベルアップの指導を行いました。未経験者には、楽しく競争させるようなゲームをさせ、自分達で積極的に練習するように仕向けました。「楽しみましたか?」と聞くと、笑顔で手を上げてくれるなど、いい雰囲気を作ることができたと思います。
 現地のスポーツ指導者に対する技術指導の機会もありました。今回の活動には、コーチングだけでなく、レフリーの育成も含まれています。「ラグビーを指導したいが、教え方が分からない」という学校に行き、現地のスポーツ指導者(普段は、バレーボールやクリケットの指導者達)に対してラグビーを教え、レフリングも教えるのです。ここでは、彼らの専門競技にも役立つように、コーチングとは何かという話もしました。
「コーチングはプレーヤーの成長のためにある、練習が終わった時に生徒がきょうは上手くなった、良かったと実感できるようなものを用意するのがコーチの仕事です。怒鳴りつけて強制的にやらせるのはコーチの仕事ではありません」。そんな話をしたあと、コーチングセッションを行い、スキル練習の難易度を次第に上げてその成果を確かめるなど、彼らのコーチングのレベルアップにつながるような方法を工夫しました。
地元のウバ州7人制ラグビー大会の運営サポート、およびレフリングのサポートも行いました。会場は、陸軍学校の敷地内を使用し、立派なグラウンドでした。参加するのは、全13チーム、高校生から大人まで約150名。18歳以下、20歳以下の学生から陸軍学校や空軍、警察官などのチームもいて、全26試合が行われました。
 私はこの大会で11試合のレフリーを務めました。決勝戦でも私がレフリーを務めましたが、陸軍学校の校長先生が試合前に出場選手と握手するセレモニーも行われ、地方都市での大会ではありましたが、ラグビー文化が根付き、ラグビー大会のフォーマットがしっかりしている印象を受けました。

■現地になじむことが、何より大切
他の青年海外協力隊員から、「世界トップクラスのコーチとは何ができるのか」という質問を受けたことがあります。私はこう思います。トップクラスのコーチは、世界のどこに行っても、練習の最初と終わりで生徒が上手くなったと実感させることができる。言葉が通じなくても、どんな文化の中でも周囲の人間を巻き込み、選手のやる気を引きだし、最終的には生徒が楽しく、上手くなれたと実感させる。それが世界トップクラスのコーチだと思います。
現地のJICA事務所の方々のサポートもあり、現地の情報も素早くキャッチすることが出来ました。たとえば、現地でデモが行われる情報があれば、近づかないように携帯電話にショートメッセージが届きました。健康管理についても感染症などの詳細な情報をいただいたおかげで任務を遂行できたと思います。また、現在、スリランカでは約40名の協力隊員が活動しています。様々なバックグラウンドを持った隊員と交流できたことも、私たちの活動に生かすことができました。
約2カ月半の活動ではホームステイをして生活しました。現地に馴染んで活動をしたいと思っていましたので、困ったことはありませんでした。もちろん、生活習慣の違いに驚くことはありました。僕のことを主に面倒を見てくれた地元のラグビー協会の会長がいます。彼が招かれたディナーに一緒についていくと、3時間ほど延々とお酒を飲むのです。そして、夜11時過ぎになって、ようやく食事になる。これがスリランカスタイルなのかと実感する出来事でした。もちろん、私も付き合いました。
今後、このプロジェクトに参加する人にアドバイスするとすれば、とにかく現地になじんでほしいということです。日本に比べて「何か」がないのは前提です。このプロジェクトは相手国の要請で派遣されるので、必ず歓迎されます。覚悟を決めて全力でやれば充実した生活を送ることができるのです。
スリランカという国で、これまで経験したことのない文化を知ることができたのは素晴らしい経験でした。ニュージーランドへのコーチング留学は自分のために行きましたが、今回は、自分が役に立っていることを実感できたし、私自身が国際貢献に関わっていきたいという思いを新たにしました。今回をきっかけに、さらなる国際貢献ができるように、自分自身を成長させ、コーチとしての器も大きくしたいと決意しています。