ラオス派遣 総括報告「ナショナルチームを指導して」

高濱丈輔
派遣先:ラオス・ビエンチャン市シサタナック郡
派遣期間:2013年3月27日~6月26日

■国際協力への関心が動機だった 
私はスポーツを通しての国際協力に関心を持っていました。過去にもオーストラリアなど海外でのラグビー経験を通して得た考え方でもあります。昨年も日本ラグビーフットボール協会のアジアスクラムプロジェクトで、インド、マレーシアに行きました。これまでの経験で、スポーツによる社会貢献は意義のあるものだし、活動継続の必要性を感じていましたので、今回も応募させていただきました。 
今回の私の役目はラグビーのラオス代表強化でした。しかし、私は今回の派遣が決まるまで、ラオスの場所さえ分かっていませんでした。ラグビーもいったいどんなふうに行われているか分からない。アジアラグビー界の中でラオスの存在というのは、それほど小さなものだったのです。
ラオスラグビー協会の設立は2001年、競技人口は子供も含んで約700人です。当然、代表チームが満足に使えるグラウンドもジムもない。私の仕事は、アメリカ大使館のグランドを交渉して借りたり、スポンサーを見つけて無料で使えるジムを見つけたり、そうした環境づくりから始まりました。

■ラオス代表ヘッドコーチとしての活動
ラオス代表は今年、日本代表が参加しているアジアファイブネーションズの下部リーグにあたるディビジョン4に初めて参戦しました。このことこそが、ラオスラグビーが本格的強化に向けて踏み出した証なのです。
ラオス協会は私に、プロのストラクチャーを導入するように要請しました。私はラオス代表のヘッドコーチとして大会に参加することになりました。ゼロからのスタートだったので、役割は多岐に渡りました。現場のコーチング、練習のプランニング、映像分析、ニュートリション(栄養、食事)プログラムの作成、フィットネス、ウェイトトレーニング、ストレングス&コンディショニングなどです。チームには熱心なボランティアスタッフがいてくれたのですが、ドバイへの長距離遠征は初の経験でもあり、私はマネージメントもサポートすることになりました。
非常に役割が多かったのですが、「眠らなければできる!」と前向きに考えて取り組みました。とにかくラオス代表を勝たせたかったのです。
約2カ月、チームにつきっきりで練習を行いました。選手の平均年齢は24歳、ほとんどが学生でした。アマチュアの選手ですから日中は学校や仕事がある。早朝と夜8時から練習時間を確保し、週末にも2部または3部の練習を行いました。
ラグビーの普及が遅れるラオスでは、高校から始める選手が多く、代表選手でも長くて7年ほどの経験です。体格は小さく、身長180㎝を超えている選手はほとんどおらず、線も細い。しかし、アジリティが高く、ステップワークは日本人よりもレベルが高いと感じました。
オス人に向いたプレースタイルは、ランニングラグビーです。運動量を上げ、攻撃オプションを多くする。ディフェンスのいないスペースに走り込み、極力コンタクトを少なくする。世界の強豪国と戦うときの日本代表に近いものを感じました。組織ディフェンスでのハイプレスができていなかったので、そこをコーチングで落とし込むと失点は大きく減りました。
結果は、パキスタン(25-31)、ウズベキスタン(15-18)に僅差で敗れましたが、小さい身体で大きな相手に健闘し、ラオスのラグビースタイルをアピールできたと思います。選手達が涙を流して悔しがっていたことは、コーチとして強く印象に残っています。
国際大会への初参加は、ラオス代表にとって大きな自信と経験になりました。選手、スタッフにも、プロフェッショナルの自覚が生まれたようです。私は帰国しましたが、代表チームはすでに来季に向けての活動を始めています。

■足がかりできた他競技団体との交流
派遣期間の終盤、ラオスサッカー協会(Lao Football Federation: 以下LFF)の方々とミーティングすることができました。他スポーツ競技団体の視察と同時に、今後の交流システム構築のためです。LFFのオフィスは、ビエンチャン市内から車で30分ほどの距離にあります。ここでは、サッカーを取り巻く環境の充実ぶりに驚かされました。広大な土地に、協会本部、スタッフルーム、ミーティングルーム、寮、食堂、天然芝グラウンド1面、人工芝1面と、先進国のプロチーム並みの環境が整備されていました。これらの施設は、FIFAからのサポートを得て完成させたそうです。
現在、ラオスサッカー代表の監督を木村浩吉氏(元横浜マリノス監督)が、テクニカルディレクターを関口潔氏が務めています(日本サッカー協会より派遣)。日本人コーチとして海外のチームでの指導ということで、様々な意見交換ができました。今後も、ラオスラグビー協会とラオスサッカー協会との交流が継続することで、相互利益をもたらし、両協会の発展へと結びつくことを願ってやみません。

■日本のコーチには大きな可能性がある
アジアのラグビー界で日本のコーチには、大きな可能性が広がっています。アジアの人々は、我々が思っている以上に日本ラグビーをリスペクトしてくれています。
日本人コーチの特徴は、コーチングに教育的な要素が入ることでしょう。高校や大学等の学校を軸にラグビーを行ってきた歴史的背景の影響かもしれません。これは、ラグビーを発展させたいという国にとっては重要です。相手をリスペクトし、チームワークを大切にし、規律を守る。そこから始めるコーチングは、アジアの国々に求められるものだと感じました。
今回のプロジェクトに参加したことで多くの出会いがありました。現地で、JICAのシニア海外ボランティアの方々、専門家の方々との交流し、スポーツとは関係のない分野の話も聞くことができたのは有意義でした。日本と海外国との交流や相互理解は、JICAの活動のような地道な継続の上に成り立っているものだと再認識しました。

代表チームの強化に没頭した約3カ月でしたが、JICAとの連携によって、安心して現地の活動を続けることができ、スポーツによる国際貢献は意義のあるものだと改めて確認できました。私のコーチング・キャリアの中でも貴重な経験でした。さらに自分自身を成長させ、現場でラグビーの発展に寄与していきたいと思います。